体育主任のお仕事
小学校において体育主任という校務分掌は非常に重く、量・質ともにボリュームのある分掌として知られています。一人前の登竜門として若手に振られ、その力が試される。
私は現任校で体育主任として働いていますが、その分掌について考え・行動することで多くの学びがありました。ツイートする前に「これ、ブログに書いた方がいいんじゃないか?」と思ったので、少しだけ体育主任の仕事について思うことを書いてみようかなと思います。ベテランの人からはあまり面白みのない記事かもしれませんが・・・笑
体育主任とは
体育主任とは教科・領域の校務分掌の一つです。はっきりとした定義があるわけではないのですが、ある著書の一部を引用してそれを定義としたいと思います。
体育主任は、体育・健康に関する指導の中心となって動く。そのため、体育の授業だけでなく、学校全体の仕事が多くなる。行事の運営、体育施設や用具・器具などを行う必要がある。
体育主任の主な仕事は次の通りです。
①体育科教育課程の編成 ②体育授業の充実を図る ③用具・器具と施設の管理
④各種体育行事の企画・運営 ⑤運動クラブ・体育委員会運営
・・・となっています。他の教科と比べても非常に多くの仕事量を任されてしまいます。小学校の世界では3大分掌として「生徒指導主任・研究主任、そして体育主任」と、学校運営に大きく関わる仕事として挙げられることが多いと思います。
しかし、これらの仕事を一人で行うことは不可能です。なので大抵の学校では体育部などが校内組織としてあり、体育主任を中心としてその業務を各学年にいる体育部の職員で行うことが多くあります。
①体育科教育課程の編成 ②体育授業の充実を図る ③用具・器具と施設の管理 これらは1セットとして考える。
体育の授業の充実がまず第一の仕事として挙げられます。
私がまず考えるのは体育館で実施するべき単元と校庭で実施するべき単元の仕分けです。1時間の中で体育館では1クラス、校庭ではせいぜい3クラスを実施するのが限界です。(広さ、規模にもよりますが)例えばボールを使った単元ではサッカーやハンドボール、タグラグビーなどは校庭単元となりますが、バスケットボールやバレーボールなどは体育館で行うのが原則です。跳び箱もそうです。なので、校庭でできそうなものは校庭、体育館でしかできないものは体育館というように、1時間に1クラスしか実施できない体育館を主軸にして校庭単元とのバランスをとります。体育館は貴重な施設資源なのです。
しかし、なんでもかんでも入れればよいものではなく、同時に教科の系統性を重視します。
私の場合は高学年単元をゴールに設定します。例えば高学年でバスケットボールについて授業をするのであれば中・低学年のうちにバスケットボールについての基礎的な技能や思考、関心を高めることが重要です。なので低学年のうちに「ボールを投げる、受け取る」ことの動作の楽しさを味わせ、中学年でポートボールやティーボールなどを通して「ボールを投げる、受け取る」ことを生かしたチームスポーツを体験させる。これらの経験が高学年のバスケットボールやハンドボールなどに生かされるだろう。というカリキュラムの系統性についての仮説をもつことです。
そしてこれらが決まればどんな道具を揃えればよいのか、③用具・器具と施設の管理についての大体の見通しをもつことができます。我が校では投力の低下を課題に挙げているので、上述したような「ボールを投げる受け取る」単元を整備したければ、子供達にとって投げやすく、受け取りやすいボールを揃えればよいのです。
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これらのボールのよさは、公式ボールではないもののボール表面が柔らかく、突き指やボールが当たっても大きな怪我に繋がりにくいのが特徴です。なので、子供達に自由に練習させたり遊ばせたりしても安心して使わせられるよさがあります。バレーボールはビーチバレーのような形態をしていますが、授業で使わせると本格的なバレーボールのように白熱します!
ちなみにハンドボールは低学年用のサッカーボールとして使っても十分なものです。一石二鳥も狙いましょう!(筆者はモルテンよりミカサ推しです笑)
④各種体育行事の企画・運営 体育主任はマネジメント業務だ!
体育行事の運営も非常に重い仕事の一つです。
体育行事の大きなものの一つに運動会があります。ここで重要なのは職員会議で提案する資料です。
まず、職員会議の提案が膨大なため、3月までの時点で次期体育主任が初心者でも大丈夫なように昨年度までの反省を洗い出し、それをもとに素案を作っておくことが肝心です。私の場合は、9月までの資料(運動会、水泳学習、陸上大会)までは作ってしまいます。これがないと次期体育主任は泣きます。(私がそうでした。笑
運動会について大きなものは係の担当職員を決め、係児童をどのように動かし運動会を運営するかです。初任者や若手の先生が多くなってきているので、係の仕事をふっても初めて経験するのでわからないといったことがざらにあります。なので、体育主任としてはそれぞれの仕事の理想やゴール図、子供達がこんな場面でこのように動いて欲しいというビジョンを示します。
また、各学年の表現活動についても少し配慮を入れます。それは表現ダンスと演舞のバランスです。表現ダンスは流行りの曲に合わせて踊るもの、演舞は伝統的な踊り(ソーラン節など)を指します。運動会は小学校が主催する地域のお祭り的な側面をあるので、地域の年配の人にも若い人にも子供達の活躍を喜んでもらえるような配慮が必要です。なので、各学年がどんな表現活動をしようとしているのか、各学年の体育部員を使ってリサーチし、種目の偏りや重複がないように配慮することも必要です。
ここまで書いていて思うことは体育主任は動くよりも頭を働かせて、職員が動きやすい提案をすることが肝心です。体育主任は力仕事よりもマネジメント業務。組織プレーを作っていくことが大切だと考えます。
⑤運動クラブ・体育委員会運営 子どもも体育科運営に参画させる
体育委員会の児童もうまく使えるとよいと思います。体育委員会を志願してくる子供達は運動好きな子が多いです。なので、学校内の子どもたちに運動を好きになってもらうにはどうしたらよいか、子供目線で考えさせると面白いアイディアがたくさん生まれます。
私の学校では、体育委員会が主宰して朝の10分間運動クラブというものが発足しています。ボールを使った遊びの企画や体力を高める走・跳の運動を取り入れた鬼ごっこなど、様々です。運動好きな子たちなので、委員会以外の子だけでなく自分たちも楽しめるものになるので、意欲的になります。また、委員会活動では用具の整備や新しく来た体育用具などの運搬をやってもらっています。新しく来た体育用具は一番先に体育委員会の子たちで遊べるという特典をつけることでモチベーションを下げないように工夫しています。笑
その他 対外行事・特設部活動について 量より質を重視
地域によっては、陸上大会や水泳大会、駅伝大会などの行事に参加するために、体育主任を主とした特設部活動が組織されることがあります。
その中で私が重視していることが以下になります。
体育主任をやって学んだ事は、特設クラブ(部活)の練習は期間は出来るだけ長く、しかし超短時間で休憩をできるだけ入れない超効率化がカギ。長時間で休憩まで入れるとダラけるだけ。
— なみおさん。 (@Geno_1021K) 2019年2月7日
これだけを担当職員で徹底的に追求した結果、子どもが優勝旗一回、大会のたびに賞状を持って帰ってきてくれました。
競技問わず、練習時間は25分。休憩なし。しかし陸上長距離走の場合はインターバル1分でノンストップ。
— なみおさん。 (@Geno_1021K) 2019年2月7日
準備体操と整理体操は念入りに。
事前の練習計画を考えることだけに力をいれる。種目ごと校内外のスペシャリストに練習法を聞きまくって校内の担当職員と共有。
量練習より質とはうまく言ったもので、文字通り、質を徹底する。体育主任も部活も量ではなく、質を最大限に高め、超効率化を考えるマネジメント業務だということに気づいた。ここにもっと早く気付けばよかった。
— なみおさん。 (@Geno_1021K) 2019年2月7日
期間をなるべく長く設定するのは、子供達に競技を生活の一部になるよう習慣化させるため。短時間にするのは、自分の経験上子供の集中力が持続するのが30分くらいであると考えていることと、練習途中でも終わらせることで「もう少しやりたいな」と思わせ、次へのモチベーションにつなげるため。
— なみおさん。 (@Geno_1021K) 2019年2月9日
①練習時間は30分以内の休憩なし
②期間はなるべく長く設け、運動が習慣化するように促す
③練習計画を綿密に立てて、週ごとの達成目標を教員と子どもたちで共有する。タイムや距離をここまで伸ばす!など、めあてをもたせるとわかりやすくてよい。
④一人ひとりに必ず一声かける。課題について話したり、よくできているところを褒めたり励ましたりする。「先生は見てくれている」に勝るモチベーションアップはありません。
終わりに・・・働き方改革とやらと体育主任と。
ここまでつらつらと、体育主任を全て知ったかのように書いてみましたが、私より優れている体育主任の方はたくさんいます。当たり前ですが。笑
我が校でも働き方改革と銘打って、業務の効率化と削減が色々と行われているわけですが、「体育主任はどの学校でも遅くまで残って色々な準備をしている・・・」みたいなイメージがあると思います。これらの仕事に加えて学年の仕事や行事、学級経営そして本業である授業をしなければならないのですから!!
私が進めているのは業務の分業化です。部活動の練習計画も陸上や水泳スペシャリストにお願いしました。初任の子でもかなり綿密な練習計画を立てる能力を持っています。子育てに忙しく、練習に参加できなくても計画について意見を聞くことぐらいはできます。教員の中には、体育が専門でなくても競技の経験があり、インターハイに出場しましたなんて人が結構隠れています。陸上経験がなくても、サッカー経験者で今でも1800mを6分台で走れる若手がおり、その人に先頭のペースメーカーをお願いしました。そういう人たちを活用しています。
そういった人材を見つけ出すのは日々日常のコミュニケーションにあると思います。話をしないことには始まりません。色々な人を頼りにすることで自分の業務が軽減されることを、身をもって学びました。
そうしていると、18時台に帰れるようになりました。自分一人の力は無力であると思い知ること、先生たちの十人十色、自分が活躍できるフィールドを与えてあげると特に若手の先生は得意分野を生かして進んでお手伝いをしてくれるようになりました。
以上です!体育主任の仕事に悩む人たちの一助になればいいなぁと、思います。