なみおさんの日記

教育したりされたりする仕事をしています。

日本学校教育相談学会研修会に参加しました。

さっそく挫折しそう(笑)・・・なので最近参加した研修について書いておこう。

 

「ネット・ゲーム依存のメカニズムと学校・家庭が果たす役割」

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神科医長 中山秀紀 先生

 

お医者さんの話なので、依存症とは、治療とは、対策とは・・・と、お医者さん目線で色々な話をいただいた。以下にざっくりまとめて行こうと思う。

 

1 依存・依存症とは(定義)

ある物質の使用やある行為が制御して止めることができなくなる、もしくは困難になる、やりすぎてしまうこと。

それによって様々な悪影響が出てくること。

厚労省のHPをみると

www.mhlw.go.jp

「医学的定義では、ある特定の物質の使用」に関してほどほどにできない状態に陥る状態を依存症と呼びます」

 

とある。お医者さんの世界ではアルコールや薬物などの”物質”によるものを依存、あるいは依存症というらしい。

 

でもネットやゲームって物質じゃないぞ、と思ったらこんな記述もあった。

○「プロセスへの依存」について
物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことを指します。

どちらにも共通していることは、繰り返す、より強い刺激を求める、やめようとしてもやめられない、
いつも頭から離れないなどの特徴がだんだんと出てくることです。

 

厚労省はこの二つを区別しているようだ。ネットやゲームは後者になる。

 

2 依存物、依存を呈しやすい物質・行為とは

 

 ある物質を使用する、もしくはその行為をすることで「快楽(快感・ハイになる・楽しい・ほっとする・安心する・・・etc)」を感じるものは依存しやすい。

 ところが、飽きてしまうものややり続けられないものは依存する可能性はほとんどない。

 一方でそれを使用する、もしくは行為をすることによって「不快」になる、「快楽も不快も感じないもの」は依存する可能性はほとんどない。

 

その逆は依存に陥りやすいというもの。

 最近のゲームやネットは世界の無限性という要素が強まったために、非常に依存しやすい構造になって来ているという。

 たしかに昔のドラクエやマリオなどステージをクリアしてラスボスと戦ったら終わり、というコンテンツは少ない。ネットを介して次々と新しいコンテンツや要素が加わっていくことで一つのゲームでも無限の世界が広がっていく。そしてスマホでもいっぱしのゲームが出来るようになったことで時間場所も問わない、となるとやっぱり依存の要素満載の内容になってくる。

 

学習心理学の「正の強化」と「負の強化」に例えての説明もあったけれども、

正の強化=楽しいからやり続ける

負の強化=依存を止めると不快になりそれらが止められなくなる(依存症特有の症状)

 

 自分は負の強化は除去のイメージ(単純に刺激による反応がなくなる、犬が「お手をしても餌もらえないんでしょ?んじゃ、やらないよー」というもの)だったけれども、止める→不快→不快を回避するために行為(ゲーム)を続ける という行動の強化が起こるという意味合いもあるのね。

 

3 依存のめんどうなところ

 

依存の面倒なところは、依存者が不幸になっていることが理解しにくいところ

 

ニュースや動画サイトなんか見ても、たいてい「こいつヤベェ・・・。」とか「部屋汚ねぇ・・・」くらいにしか思えない。でも、それぞれ依存者は同じように生きていて年齢がある程度達していれば(わたし、大丈夫かな・・・大丈夫じゃないよな・・・)と思うだろう。でも、それでもやめられない。この世界から離れたらどんどん不幸になってしまう(気がする)から。

かつて私が出会った子供たちの中に近親者との死別からゲームにのめり込むようになってしまった事例がありました。詳しくは書けませんが、近親者との死別のショックや精神的不安定から逃れるためにゲームの世界に行ってしまう・・・。しかし、はたからみたらそんなことはわからないし、わかろうともしないんだろうなぁとも思う。むしろ現実逃避で甘えてんでしょ?みたいな。

依存するものの不幸とは何か。表面的な行動だけでなくその内面の不幸に向き合うことが根本的な解決に向かわせるのだろうと感じる。

 

4 データで見てみると

 

インターネットの個人使用率は全体でおよそ8割、13ー19歳、20代30代の利用率はほぼ100%

www.soumu.go.jp

 

総務省のデータを出していたけど、どこに載っているのかちょっとわからなかった。(特に13ー19歳の調査はないんだけどな・・・)

とはいえ、幅広い年代や世帯年収の人たちがインターネットに触れていることはわかる。

 

さらに

子どもとメディアのよい関係づくりのために―福岡市「小・中学生のメディアに関する意識と生活」アンケート調査報告 (保健師ジャーナル 70巻8号) | 医書.jp

の馬場伸一さんの、「福岡市内の小中学生をもとに平日の総メディア接触時間について」のデータ

さらに神奈川県の3市のデータ

横浜市 子どもたちのネット利用に係る実態調査の結果について 〜小中高校生の9割超がインターネットを利用 生活習慣やルールづくりが利用時間と密接な関係〜 (平成26年10月10日記者発表資料概要)

 

などなどを出しつつ、小中高生がかなりスマホなどを使ってインターネットを利用していますよーと言っていた。

 

その中で「インターネット利用時間と大学生の進級率の悪化には相関がある」として以下のような文献も。

 

jglobal.jst.go.jp

 

まぁそりゃそうだわな。笑

 

その後、気になったのは発達障害との関連の部分。特にADHD傾向のある人、自閉症スペクトラムの人は依存リスクが高いという研究があるという。

 

 

5 発達障害の関連と・・・

 

 韓国の研究だけどインターネットの利用とADHDが関連しているというデータもあった。

その中で話していたのは

・インターネットは現実社会よりもレスポンスが早いので、待つことが苦手なADHD者にとってインターネットの方が心地よいのかもしれない

・ゲームの中には脳内に快楽をもたらす神経伝達物質ドーパミン)が放出されるが、ADHD者は日常生活のストレスをゲームによって解消しているのかもしれない。

ADHD者は自己制御がかなり困難なので、インターネットにのめりこむと自己制御しにくいのかもしれない

ADHD者はその衝動性、過活動、不注意などの症状から現実生活では不適応を起こしやすいが、インターネット上ではこれらの症状が覆い隠される可能性があるのかもしれない

 

ここに関しては慎重になるべきだと思う。

確かにADHD者の衝動性とゲーム・ネット世界の無限性、次々と移り変わっていくコンテンツとの親和性は高いと考えるが、ADHD者の依存の治療過程や予後についても考える必要があると思う。自分の置かれている状況(自己洞察)を見るメタ認知的な力も弱そうだけども、それはADHDの子どもに限った話ではない。

 

 

6 学校や家庭での対応・対策として

 

外堀(ネット・ゲームをさせない環境)と内堀(ネット・ゲームを利用する環境やルール)の話。ルールを一生懸命考える研究や対応がなされているけども、まずは外堀を固めていくことが肝要。内堀で守るのであれば自己制御が適切にできるようになる大人になるまで時間稼ぎをする必要がある。

 

 いや、無理でしょ。笑 データでほぼ全員がネット・ゲームを利用しているデータがあるのにそれらを全部ひっくり返すのは無理難題でしょう。

 むしろ我々はタブレット端末を使った授業やモラル教育などを推進する立場なのだからもうここまできたら内堀で勝負するしかない。

 ただ、われわれの構えとしてネット・ゲーム依存は誰にでもおこりうるということと、発達障害の傾向のある子供は要注意ということ、そしてゲーム・ネット依存は物質(薬物・アルコール)と同じく正の強化(快楽)と負の強化(なくなったことへの不安、その不安からの回避)のスパイラルに陥るということをわかっておくべきでしょう。

 そして、依存に陥ってしまった家族への支援も考える必要があるのだなあと、そんなことを考えておりました。